コンサルタントの態度としてあるまじき!なのですが、私は「効率化」という言葉があまり好きではありません。良い悪いの話ではなく、好き嫌いの話です。もちろん私も仕事の効率化はしようとしますし、私ではない誰かが実践してくれた効率化のおかけで、便利な社会生活を営むこともできていることも理解しています。でもなんか楽しくない。もう少し正確には「効率化という行為において、好きではない側面が多々ある」とういことなんでしょう。それは何なのか考えてみました。そこを避ければ、安心して効率化ができるかもしれません。
ひとつめは効率化しても忙しくなるだけ、と感じるからです。自分でソフトのスクリプトなどを作って動いているのを眺めているのは楽しいです。また食品工場でロボットがお菓子を作っているのを眺めているのも飽きません。だから自動化による効率化は結構、ウキウキしてみています。しかし自動化で浮いた時間に新しい仕事が詰め込まれ、世の中がどんどん忙しくなっている現実もあります。また新たに詰め込まれた仕事が、意味あるものであればまだ救われます。しかし多くの場合、仕事のための仕事。菅理のための管理。そういうものが増えてくる現実がありますよね。思えば産業革命以来、科学技術の進歩によって空いた時間を人類はろくなことに使っていない。ブルシットジョブという言葉が流行しましたが、まさにそんな感覚があります。
ふたつめは、マイノリティがおいていかれる問題です。これは当事者研究を始めて最近になって気がついたことです。効率化をすすめようとすると、マジョリティに焦点をあわせる方が有利です。大量に一気に片付けられるからです。しかしそれによってマイノリティがますます不便になっていく。世の中はとかくマジョリティ向けにできていますが、その傾向が加速するのです。それは私たちが望む未来なのか?という疑問が残ります。たとえば最近は交通機関、レストラン、ライブイベントなどほとんどのサービスがスマホ前提になっています。それに乗っかっているうちはそれでとても便利。だけど、そこから外れた瞬間に大変なことになります。セーフティネットは用意されていますが、やはりかなりの不便を強いられます。先日、行ったライブでは同行者のスマホチケットが機能しないというトラブルがありました。明らかにチケットアプリの環境依存のバグなのですが、現地のスタッフに権限がなく融通が効きません。その時は私のスマホでなんとかしましたが、ライブが始まる時間が近づき冷や汗をかきました。一方でスマホを便利に使っている自分もいる。自分がマジョリティであるときに常にマイノリティに意識を向けることが、自分がマイノリティになった時に自分を助けることになりそうです。
みっつめは私が効率化を好きになれない根源的な理由かもしれません。私の発言や行動が無駄だらけなんです。リモートワークが導入されて、私の周りの多くの打ち合わせの標準時間が60分から30分になりました。しかしその貴重な30分の冒頭で、私はどうでも良いことをひたすらしゃべっていることが多いようです。自覚はないが(いや実はありますが)、同僚がよく指摘します。その場に関係はないけど、面白いと思ったことをしゃべっちゃうのです。私の無駄話は効率化においては、最初にターゲットになります。それは嫌。「効率化ばっかり考えていたら、新しいことができるか!」とうそぶいたりもしますが、実際はそんなに格好いいことではなくて、単に無駄話が好きだったりするんです。周りにいる人の温かい目に助けてもらっています・・・。
効率化といえば、思い出すことがあります。20年くらい前のこと。役所に何かの手続きにいったとき、私は受付でクリアファイルに入ったチャートを渡されました。そこには「最初に2番窓口でここに印をもらって、次に5番窓口で印をもらって、次に3番に行って・・・」とひたすらハンコをもらう行き先と順序が書いてあります。その一連のタスクをこなするとひとつの手続きがやっと終わるわけです。私はそれをみて感動したんです。普通であれば、私が書類を持ってあちこち回らなくても、カウンターの向こうで私の書類が手順に従って回っていけばよいはずです。しかしそうするには、カウンターの向こうで書類を手渡しする手間ができる。間違いがあれば指摘も必要。また「遅い。いまどうなっている」と苦情もでる。そうではなくて利用者が書類を持ってあちこち行き、担当者は席に座って確認すればいいわけです。プロセスを可視化するから状況もわかる。これは利用者の利便性向上ではなくて、役所の人が自分たち用に効率化した姿でした。その発想の逆転に、なぜだか感銘を受けました。
そんなことを思い出したのは、最近、とある手続きを公的機関でするときに同じ現象に再度出会ったからです。そこでは銀行の口座引き落としの書類提出がを求められましたが、書類に「銀行確認印」があるのです。つまり自分で口座番号などを書類を書いただけではダメで、口座登録用の書類を銀行で確認してもらって印鑑を押してもらう必要がある。おそらくこれまで間違いが多くて、再提出などの手間が多かったのでしょう。それを削減したいからそうなったのだと思います。しかし法人窓口がある銀行の支店は少なく、さらに混んでいる。ここでも利用者にかなりの手間をかけてもらうことで、自らの効率化をすすめています。
ここでハッとしました。これって「なんでもユーザにセルフでやってもらう」というデジタルビジネスの基本なのかも。ということは役所は最先端なのかもしれません・・・ということを考えながら銀行に向かったら、到着したのが15時を少し過ぎており、窓口は閉まっていました。

2025年8月18日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦