ビジネス

お金の正体!?

お金とは何か、ずっと考え続けています。

お金は不思議です。これだけ価値が多様化している世の中で、国家も犯罪組織も、企業も個人も、老いも若きも、価値観や宗教観が異なっていても、みんなお金が欲しいわけです。例外はあるでしょうがほとんどの人は理由はともあれお金はあった方が嬉しい。そこだけは価値観が共通しています。だけどお金の正体がわかっている人はいないような気がします。私も考え続けていますが、辿り着けず・・・。だけど少しずつわかってきたこともあるので、思い切って書いてみたいと思います。こういうことを続ければ、いつか辿り着けるかも、と期待をしています。

教科書ではお金には3つの大きな機能があります。「価値尺度」「価値保存」「交換」です。一つずつ見ていきたいと思います。

(1) 価値尺度 – 価値が測れない

価値尺度とは、世の中にはいろんな価値があるけれど比較が難しいからお金に換算して「これは100円の価値です」と一つの物差しで価値を決めてしまおう、というものです。いわゆる「価格」です。複数の視点があるものをひとつの指標にするかなり雑な発想でもあります。

最近、価値尺度について印象的なことがありました。ChatGPTのOpen AIが、元Appleデザイナーのジョナサン・アイブが作ったioという会社を65億ドル(1兆円弱)で買収したというニュースです。ジョナサン・アイブといえばiPhoneを手がけた伝説的なデザイナーです。だけどioは創業してまだ1年。まだなんの製品もだしていないのです。つまり成果がゼロ。「ジョナサン・アイブという人の能力に1兆円も出したのか・・」と驚きました。

でもよく調べてみると、買収はOpenAIとの株式交換です。Open AIの時価総額は70兆円近く(2025年8月時点)まで上がっています。企業の価値は将来価値も含めていますので、今回の例は将来の価値をいれて70兆円の企業が、将来の価値もいれて1兆円の企業を買収した、ということです。1兆円の買収と聞くと驚きますが、時価総額のうちの1-2%を使った株式交換と聞くと納得できます。お金に換算すると1兆円ですが、それはお金が価値をうまく測れておらず、単なる数字になっている気がしました。私たちの財布に入っているお金と、この1兆円は明らかに違うものです。この例に限らずお金が価値をうまく測れない現象はたくさんあるように思います。

(2) 価値保存 – 保存できない

価値保存とは、価値をお金の形で保存すること。たとえば農家の方は自分で食べる以上の農作物を作って生計を立てています。しかし農作物は賞味期限があります。そこで農産物を保存するのではなくお金に形を変えて保存するというわけです。

しかし時に、お金の価値が暴落することがあります。ハイパーインフレです。日本でも戦後の1945年から1949年にかけて70倍のインフレを経験しました。最近で強烈だったのはジンバブエです。Wikiによれば2008年11月のインフレは月間800億%とのこと。月初にあった800億円が月末に100円になるわけです。年換算では89.7 sextillion (89.7 x 10の23乗)という、もはや理解できない数字。

しかしよくよく考えてみると、これはジンバブエドルというお金の価値が一方的に下落した話です。ジンバブエでは農家は農作業をして一定の収穫があるでしょうし、国にある文化財などの価値が下がったわけでもない。お金が価値の保存をできなくなっただけで、ジンバブエの持つ富の量が劇的に無くなったわけではなく、ちゃんと存在しているわけです。そう考えるとお金による価値の保存機能もだんだん怪しくなってきます。

(3) 交換 – いざという時に役にたたない

最後に交換です。これは決済も同じです。取引の際に物々交換では不便だからお金を媒介にして、取引をスムーズにしようというわけです。私たちが労働をする場合も、労働の対価としていきなり米やお肉をもらうのではなく、いったん労働とお金を交換しています。

これに関連してお客様から印象的なことを伺いました。東日本大震災の際に東北で半導体工場が被災したとき、日本の自動車産業に危機が訪れました。部品が入手できないのです。復旧までには数ヶ月かかると予想されていましたが、顧客企業である日本のメーカーの人が知恵と努力で1ヶ月で復旧しています。私もニュースで読んだことがありますが、現場にいたその方の話では「日本のものづくりの奇跡だ」と、いまも興奮気味に話をされています。半導体工場の復旧はいくらお金を積んでも解決できなかったはずです。お金は役に立たず、人の力が唯一の解決方法だったのでしょう。

震災やコロナで物不足になったときなど、なにかあったときにはお金が助けてくれないことは、何度も経験していますよね。役に立ちそうで、いざというときに役に立たず当てにならないのもお金なのです。

そんなことをつらつら考えていましたが、私にとっても最近、印象に残る出来事がありました。私の知人は年間に数十匹の猫を保護し命を助けています。野良猫は生きていける子もいますが、子猫のうちに捨てられたらカラスに狙われたり、栄養失調になったりして多くは命を落としてしまいます。また成人した猫でも長く生きられない子も多くいます。保護猫の活動は、そんな猫を保護し、治療したのち、里親を見つけます。

私もやりたくても環境や時間の制約からなかなかできない。そこで寄付をすることにしました。寄付としては多額と思います。寄付の振込をしたとき、私はなんというか多幸感に包まれました。「ああ、これでたくさんの猫が救われる」という思いが広がり「お金が活きた」という感覚を初めて持ちました。私が持っていたら別の何かに使われたお金が、その活動家のもとにいくととても活かされるのです。

つまり「上手に使うと活きるのがお金」というのが今の結論です。とっても当たり前だけど、少しでも多くお金を活かした体験していきたいと考えています。

2025年9月1日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

TOP