テクノロジー

ドラえもんに追いついた小学生

ドラえもんの誕生日は、今から87年後の2113年9月3日だそうです。ということは、いまの小学生の多くはドラえもんの誕生日を迎えることができます。これってすごいことと思います。私の感覚ではドラえもんは遥か未来から来たロボットでした。自分が生きていない世界はどんなふうになるのだろう、と夢想して漫画を読んでいた記憶があります。

私は、どうやらドラえもんに追いつかなそうですが(いや、実はワンチャン追いつくかも、とちょっと期待していますが)追いついたSFもたくさんあります。2001年宇宙の旅、バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2(2015年)、宇宙兄弟の最初の頭突き(2025年5月)など。ターミネーターが来たのは2029年からなのでもうすぐです。追いついたSFを見た人みんなが思うのは、

「現実は思ったより変わっていないな・・・」

ですよね。車は空を飛びませんし、いまこのコラムは昔より少しだけ速くなった新幹線の中で書いていますが、リニアモーターカーではありません。

生成AIや携帯電話、スマートウォッチなど、想像していた未来もきました。一方でSNSや暗号通貨など、想像していなかった未来もあります。バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2では、マーティーがテレビ電話で解雇を宣告された後に、FAXで紙の通知書が家に届きます。私も社会人になったときに上司から言われたのは「将来は、新聞がデータで家庭に配信される。朝に家でプリントしてから通勤するんだ。本も家で製本する様になる」という話でした。家庭でのオンデマンド印刷の未来を熱く語られ、私も「すごいなあ」って想像したものです。惜しい。もうちょっとでした。iPadなんて使ってみるまで、想像つかないですからね。ほどなくしてノートPCが出てきた時も、まだ画面で新聞を読むという発想には至っていませんでした。私たちが描く未来は空飛ぶ車だったり、リニアモーターカーだったり、どうしても今の延長線上で考えてしまいます。

最近の1980年代と現代を行ったり来たりするドラマ「不適切にもほどがある!」でも、現在の人も1980年代の人も、未来や過去に来たことに最初は気がつきません。当時の形をしたバスが普通に走っていますし、それくらい見た目は変わっていないのです。

見た目は変わっていないけれど、情報やAIで中身が劇的に変わったのが我々の住む現在です。それについて印象的な思い出があります。1995年に初めてアメリカ出張したときのこと。当時の日本の公衆電話は、テレホンカードが普及しており、ISDN回線でPCを接続することもできてハイテクマシンでした。公衆電話一台で数十万すると聞いたこともあります。一方、アメリカに降り立ってみると、街にあるのは古い硬貨を入れるボロボロの公衆電話ばかり。

「日本の方が進んでいるな」

とほくそ笑んでいました。でもよく観察してみると、アメリカ人は何やらカードを見ながら電話をしています。現地の方に聞いてみると、それはコーリングカードというもので、自分の番号をプッシュするとクレジットカード払いで電話がかけられるのです。これには驚愕しました。日本で高価な公衆電話を展開していた頃、アメリカでは古い公衆電話のままで、中身が高度なサービスになっていたのです。いまのクラウドサービスの先駆けです。「クリエイティブな発想とはこういうことだ」とつくづく感動するやら反省するやらでした。既存のハードのまま中身を高度に入れ替えるのは、とっても格好いい目指す未来像です。

これから数十年先に、きっと想像していない未来が訪れるのでしょう。私が長生きしたいなっていつも思うのは、そういう未来の答え合わせをして「ああ、間違えたなあ」って言いたいのです。

2025年9月8日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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