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アウトプットが先。インプットが後 – 自分の頭で考えるコツ

ますます先の読めないこのごろ。「自分の頭で考える」ことの重要性が増していると感じます。しかし近年のテクノロジーの進化もあり、ますます難しくなっているとも実感します。何か考えるときにChatGPTにまず聞く誘惑にもかられるます。しかし生成AIのツルツル問題で語ったように、平坦で面白みにかける内容になってしまいがちです。面白みにかける、とは深みにかける、とも言えます。これがまずいのはサラッと流れてしまうので、議論を産まないのです。「地球環境を守るのが一番大切です」と言われても「そうですね」と返すしかない。地球環境の何を守るのか、どうして大切なのか、そんな議論を生むためには、もう一歩自分の言葉で語る必要があります。

私は東京大学の主に1、2年生にむけてゼミを友人たちと開講しています。ゼミの初回はオリエンテーションで、私が「今世の中でおきていること」についてプレゼンをします。学生はそれを聞いて面白そうと思ってくれたらゼミに応募するし、つまらないと思ったら来てくれない。責任重大な役割です。これまでのところは人気ゼミになっているので、私もなんとか役割を果たしているようです。学生からの質問で多いのは「どんなインプットをしていますか?」です。それに答えるうちに、一つのことに気が付きました。それは、

 「インプットよりアウトプットを先にする」

です。何かテーマについて考えるときに、ChatGPTにかぎらずGoogle検索や関連する書籍も読まない。インプットなしにアウトプットをするのです。学生は大量のインプットをもとに分析して考える習慣がついているので、こう答えると意外そうな顔をします。しかしアウトプットを先にしてしまった方が絶対良い。これが私の長年の結論です。

学生はこれまで20年近く生きています。かなりの経験と知識を得ているはずです。

 「いったん、これまでの生きてきた中で得た情報だけで考えてみよう」

これが最も効果的な思考法だと思います。自分の手持ちの情報だけでいったん解を出すと、そのことにアンテナが立って、突然たくさんの情報が向こうからやってきます。街を歩いていても、遊んでいても、自分の考えを強化する情報、反証する情報、それらが次々と入ってくるのです。何かについて調べ事をしていたときは全然情報はなかったのに、考えていったん結論を出すだけで、情報が飛躍的に増します。あとは、それら情報をうけて結論を修正すれば良いわけです。

ひとつだけマイナス面があるとすると、恥をかきやすくなること。私も「何にも知らないのだな」「薄っぺらい話だな」と、結構な言われ方をしてきた過去があります。先に十分なインプットがあれば避けられたことかもしれません。だけどオリジナルであるためには必要な痛みだと思います。気にしつつも「恥が自分を強くする」と自分に言い聞かせ、今日も恥をかいています。

2025年10月27日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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