英語の数字感覚

日本人3投手が大活躍した今年のワールドシリーズ。野球ファンの私も大興奮で、国内ニュースだけではなく海外のニュースも見ていました。そこでちょっと面白い表現に出会いました。

 Yoshinobu Yamamoto becomes the 1st Dodger since 2021 to record 200 Ks in a season!
 山本由伸は、2021年以来、シーズン200奪三振を達成した最初のドジャーになった。

 Shohei Ohtani now has 100 home runs as a Dodger.
 大谷翔平は、ドジャーとして100ホームランを記録した。

ドジャースではなくて「ドジャー」です。チームの選手一人ひとりはドジャー。みんなが集まってチームになった時初めて複数形のドジャースになるというわけです。

30年くらい前に、英字新聞を英語の勉強のために読んでいた時期があります。その頃に「阪神タイガーの新庄は・・・」ということが書かれた英語の記事を見つけて、この表現に出会いました。最初は誤字と思ったのですが、スポーツ欄をくまなく見ると、「中日ドラゴンの落合は」という英語での表現も発見しました。野球ファンの私は、子供の頃からなんとなく「チーム名にはズをつけるものだ」と思っていたのですが、単数の選手が集まって複数のチームになると気がつきました。これは格好いいです。阪神の選手は猛虎たち。中日の選手は昇竜たち、というわけです。

このことを当時に知人のアメリカ人に聞いたところ「そんなことないよ。普通にタイガーズの新庄というはず・・・」と言った後、「あれ、本当だ。タイガーって言っているわ」と本人も気が付かずに使っていることがわかりました。英語のネイティブにとっては、日本語の「てにをは」と同じで、自然すぎて意識していないのでしょう。

ちなみにドジャーズの由来は、昔チームがニューヨークにあったころに「路面電車を避けて(dodge)歩く人」を「トローリードジャー(Trolley Dodger)」と呼んだいたからとのことです。不思議なネーミングです。でも以前に大リーグに存在したモントリオール・エクスポス(いまのナショナルズ)は、万博に由来して付けられたそうです。つまり選手は「万博たち」です。やっぱり不思議なネーミングセンスです。

掛け算問題

もうひとつ数字感覚で面白いと思った話。

私は天体写真を撮影します。星雲など天体はとても淡いので、複数枚の写真を重ね合わせて撮影します。そのとき、たとえば300秒露光の写真が10枚のときは、

 300秒 x 10枚

と表現します。1個200円のリンゴが10個のときに、200円 x 10個と書くのと同じです。だけど英語圏では表現が逆で「300秒露光の写真が10枚」を次のように記載します。

 10 x 300 sec

枚数が先なんです。リンゴの例では10 x 200円ということです。これも日本人的には不思議な感じがします。だけどよくよく考えてみたら、Twelve Monkeys(20モンキーズ)とか、Seven Samurai(七人の侍)とか、数を先に書く例がたくさんあります。そう考えると不思議でもない。

掛け算の順序問題は、定期的にネットで論争になります。かくいう私も小学校のときに、1個200円のリンゴが10個という問題を10 x 200と答えて、不正解にされた経験があります。その時はとっても納得したので、その頃のすり込みが今も生きているようです。ちなみに掛け算問題の私の立場は、数学的にはどっちでも同じと思いつつ、順序を習うことでかけ算の概念が分かった気がするので、そう教えてくれたのは良かったと思っています。でも個人や文化によって異なるだろうから、どっちが先というルールはいらないなとは思います。

2025年11月24日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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