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シニアは最前線を走ろう!

これまで学生さんや若い人のことはちょくちょく書いてきましたが、私を含むシニアの話はしていませんでした。今回はシニアの仕事についてです。ここでのシニアとは職業人としてのシニアですので、世の中一般でいうシニアより少し若い50代くらいからをイメージしています。

私は昨年の6月に26年勤めたアクセンチュアを退職しました。現在は主に名古屋大学発のベンチャーであるアイクリスタルで働いています。アイクリスタルの人員構成は独特で、20代、30代のエンジニア層に加えて、わりと50代前後のシニア層がいてみんな戦力として活躍しています。現場の事情を知らない方は「ベンチャーでシニア社員が活躍できるのだろうか?」と思うかもしれません。これが、どうして会社の成長のために、なかなかの動きができるのです。その共通点は

 自分で動くこと

活躍しているシニアは、いつも客先に行ったり、自ら手を動かして開発したりしています。最前線で一緒に走っている。私も前職に比べて自分で提案書を書くことが圧倒的に増えました。客先もよく行っています。これは私に限らず、他のメンバーもそうだと思います。

いま大企業で働いている人の中には、「これからは、これまでの経験を活かしてアドバイスをするポジション」のような仕事を探そうとしているかもしれません。だけど、それはうまく行かない気がしています。受け入れる側の現場からすると、ぶっちゃけ歓迎できないですよね。私も若い頃に職場に「丹羽くん。そんなやり方ではダメだよ。こうしなきゃ」と、「手は動かないけど、口だけ動く人」がやってきたら上手に避けるようにしたと思います。若い人は自分の好きなように仕事をしたいし、時代だって変わっています。それより「ここは私がやっておくね」と自分で動く人に来て欲しいはず。まあそれでダメならあきらめることもできます。

自分で体を動かして一緒に仕事をする中で、初めて経験が活きるのではないでしょうか。営業、プロジェクト管理、製品・サービス開発など、活躍の場はたくさんあります。この1年弱で見聞きしたことでは、経験の活かし方はいくつかのパターンがありました。

言いたくないことを堂々と言える

値上げ交渉だったり、プロジェクトの納期の延期交渉だったり、いかにもお客様に文句を言われそうで、言わなければいけないけれど言いたくないことはたくさんあります。若い頃は私も「恥をかきたくない」「叱られたくない」という気持ちが先行して大事なことを言い出せず、つい自分たちに不利な条件を押し込まれることも多く経験しました。ここはおじさん、おばさんの厚顔無恥の出番です。頼まれもしないのに飴ちゃんをあげるおばちゃんのごとく動ける。言いたくないことも平気な顔をして堂々と言える。これはシニアの特権だと思います。

ピンチに強い引き出しの多さ

仕事をすすめていると袋小路に入ったり、判断をミスすることも多くあります。そんなとき「こうしたらどうだろう」という選択肢を多く提示できるのは、経験の多いシニアならではと思います。私も新人のときに炎上プロジェクトで立ち往生していると、いつもはとぼけた部長がその時もとぼけた顔で「何度も炎上させたけど、終わらなかったプロジェクトは無いんだよな」と言った言葉に救われました。ピンチな状況で平然と発したその一言で一気に楽になった記憶があります。長年働いていると何度も修羅場を経験しているはずです。何かピンチになったときに平然としていられるのは、そのときの経験をもとに対処する引き出しを持っているから。それが落ち着きを作っていると思います。

リスクの予見

引き出しの多さと関連して、事前にリスクが読めることもシニアの強さかと思います。スターウォーズのハン・ソロが「嫌な予感がする」というやつです。それでもハン・ソロは突っ込んでいきますし、私もそうですが、リスクがあってもついやりたくなる人も多いでしょう。だけど「嫌な予感」を感じながら進めることで、助かることも多くあるはず。経験に裏打ちされたリスクの予見とその回避方法の提案は、シニアに期待されていることですね。

習得に時間がかかる技術

AIやデジタルなど新しい技術が進んでも、変わらない技術、習得に時間を要する技術も多く残っています。それらの技術の蓄積はとくに若い会社には望めないものなので、保持しているシニアはとても重宝されます。ソフトウェアが中心のアイクリスタルにもそんな凄腕のシニアなエンジニアが在籍しています。スタートアップを立ち上げた私の後輩から聞いた話では、彼の会社ではハードウェアエンジニアが活躍しているそうです。ソフトウェアが進化してもハードウェアが無くなるわけではありません。とくに機械や材料に関するノウハウは、言語化できていない勘が必要になります。そこに経験が活きるのです。またそういったエンジニアの多くは、晩年は管理職でつまらない思いをしていた人が多いので、現役復帰で腕まくりして活躍されていることが多いように感じます。

シニアなメンバーと話していてよく出てくる言葉が「楽しいよね」です。シニアになってくると出世とか、組織の理屈とか、「同期のあいつが偉くなった」とか、そういったしがらみがとても減ってくるので、ピュアに好きなことやりたいことにフォーカスして働けます。それはこれまで頑張ってきたご褒美みたいに感じますし、そんな場を提供してくれる若い人には、心から感謝したくなります。だからよく体が動けるのだと思います。これまで得たものを社会に還元したいと思う人も多いでしょう。そんな時は、自分がエンジンになって動くことがオススメ。「私にはそんな経験もノウハウもない」と思っている人も、思い切って最前線に立つことで、気が付かなかった自分の強みが発見できるのではないでしょうか。

まだ体が動くうちは動こう!そんなふうに思っています。

2026年4月28日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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