ちょっとした言葉で、ものの見方ががらりと変わることがあります。最近の私の経験したフレーズがこれ。
過去は変えられる
時計の針を巻き戻してやり直したいことはたくさんあります。しかし過ぎ去った過去は変えられない。そう思ってきました。しかし認識一つで過去も変えられる。そんな話です。
派手な失敗はここでは書きにくいので(笑)つい先週にあった私のやらかしを一つ披露します。アストロライフ社は私が一人でやっているので情報システム部員も私だけです。先週、朝から会社のメールサーバーの他社への移行作業をしていました。ドメイン名のastrolife.co.jpはこのホームページでも使っていることもあり、ミスはしたくない緊張感のある作業です。DNS設定など古い知識のままの私にはなかなか骨の折れる作業でした。困ったのは断片的な情報はあるもの、まとまった情報がないこと。そこで生成AIに聞いてみることにしました。さすがAI。綺麗に整理して教えてくれます。Google検索では知り得なかった細かい情報もあり、作業がはかどっていきます。最初のうちはAIの出す情報を鵜呑みにせず、検索などしながらダブルチェックをしていたものの、スムーズに進むためだんだんAIを信頼して依存していく私。なんていいやつだAI。そして最後に事件が起きます。AIによる誤った情報に従った私は消してはいけない情報を消してしまいました。ログインもできないようになり自分では直せないため、現在、サービス会社による復旧待ちです。普段なら何かを消去する時はとても気をつけるのに、と無駄にした数時間とこの先の復旧作業にかかる苦労を想像しへこんでいました。でもふと思ったんです。
これは今後、AIで起こしてしまうもっと大きなミスへの防災訓練なのかも・・・。
そう考えるととっても合点がいき、なんだかスッキリした気持ちになりました。これまでも過去を反省して今後に活かすことは散々やってきました。でもそれとはちょっと違う感じなんです。反省には悔しさとかいらだちとか、やるせない気持ちを伴います。でも過去を変えられた、と思えた時は本当に認識が変わりこんな失敗も「良きこと」のように感じられました。失敗のファンタジスタと言われる私ですから、これは大発見です。
思い出したくない過去を変えるのは?
そうなると思い出したくもない過去の出来事も認識を変えたくなります。でもそれはちょっと注意が必要に思います。ポストトラウマティックグロースという言葉があります。傷ついた自分を成長のストーリーで説明して、自己の回復を目指すことを指します。当事者研究で学んだのは「大いなるストーリーで回復を目指す」ことは本人の回復には効果があります。しかし内心は納得できず、くすぶっていることもあるのです。例えば、過去に酷い仕打ちを受けてきた人が「あの経験があるから今の自分がいる。厳しい経験には感謝している」と言うことがあります。体罰を容認するときにもよく使われる言葉です。実はまだ納得できずモヤモヤしている場合には、他者に対していらだちをしめし「私はこうやって育てられてきたんだ」と次なるパワハラを生み出し、パワハラを連鎖が起きる要因になることも少なくありません。自己の体験への安易な解釈が他者への加害性を生むのです。だから安易に過去を肯定するのもリスクがありそうです。私はコツとして過去がキラキラする感じになっているかを目安にしています。キラキラしていれば、それは単なる反省でも、苦し紛れの回復でもない、リアルな過去だと思うのです。
歴史は変わるか
過去が変わるのは個人のことだけではなくて、歴史もそうだと思います。思えば歴史とは不思議です。例えばある100年を考えると、世界の数億〜数十億人の人間が100年分をそれぞれ体験しており、数百から数千億年分のストーリーがあります。そこからごく僅かを切り取って教科書の数ページにまとめるのです。切り取り方によってはいくらでも歴史は作れます。だから歴史解釈の違いでいろんな人や国で揉めるのでしょうね。
てなことを考えていたら、最近、こんなことがありました。営業帰りの2人から個別に話を聞いた時のこと。1人は「議論がたくさんできて、とてもうまくいった。案件が進みそう」もう1人は「散々で無理そう」
同じ時間を共有していても、まったく違う世界を生きているのですね。

2025年12月15日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦