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お金の特性 – 割合で実感し指数関数でわからなくなる

お金が増えた、減った、というとき私たちは感覚的としては、割合ことを気にしているようです。子供の頃にお小遣いが100円増えたら嬉しいけれど、いま給料が100円増えても「なんやねん」と感じる。また新入社員のときの1万円昇給と、入社して何年もたったときの1万円昇給も意味が違ってきます。月給20万円のときに1万円あがると5%の昇給ですが、月給50万円のときの1万円は2%。お金の価値は相対的なので、いまもらっているお金との割合で喜んだり残念がったりするのだでしょう。

企業においてもビジネスの成長は割合、つまり成長率で測ります。「売り上げが前年度から10%増加した」というフレーズはよく使われますが「10億円増えた」という言い方はどちらかというと補足的です。企業は資本効率が重要なので、ビジネスの規模に応じた成長が求められるからです。同じ1億円の売り上げ増大でも、売上高10億円の企業なら10%成長ですが、1兆円の企業ですと0.01%成長なのでゼロ成長となるわけですね。

割合が数年続けると指数になります。ここで大きな問題が立ちはだかります。

指数は直感ではわからない

子供の頃に読んだ本に「紙を42回折ると、その厚さは月に届きます」と書かれていて、驚いたことがあります。月までの距離は38万km(3000億mm)。2の42乗は4.4兆。だから紙の厚さが0.1mmだとすると4.4兆x0.1=4400億となり、42回折ると月に届くのです。これにはびっくり。月って、めっちゃ遠いのに42回でとどいてしまうのです。

(ところで月といえば、来月の2026年4月にアポロ計画以来53年ぶりに、アルテミスIIで人類が月を周回します。私が注目しているのは「人類が丸い地球を肉眼で見るのは53年ぶり」という事実です。地球は丸いとみんな信じていますが、丸い地球を肉眼で見たことがあるのはアポロ飛行士24人だけです。国際宇宙ステーションでも、全体の1/4しか地球は見えないそうです)

つい話がそれましたが、こんなに遠い月に、42回紙を折るだけで到達する。指数関数恐るべしです。

もうひとつ。指数については、私が好きなクイズがあります。

  「コップに細胞を一つ入れました。この細胞は1分に1回、2個に分裂します。24時間後にコップをみると細胞でいっぱいになっていました。細胞がコップ半分だったのはいつでしょうか?」

このクイズ、少し考えると答えは「1分前」とわかります。1分に細胞が2つに分裂するから、1分前にはコップ半分だったのが二つに分裂してコップいっぱいになったのです。でも、私はパッと考えた時は「数時間前」と思いました。そしてその後に「ああ、1分前か」と気がつきます。このクイズは物理学者に聞いても同じ感覚になるそうです。つまり人間は「直感的に指数を理解できない」のです。

また指数に関する人間の不理解もあります。コロナウィルスが猛威を振い始めた頃、ニュースで「このまま行くと、感染者の数は指数関数的に増えてしまいます」と言っていました。しかしこれはおかしな表現で、コロナウィルスは最初から指数関数的に増えています。一人が複数に感染し、それがまた複数に感染するから、感染する初期の段階から指数関数的に増えているのです。それが、大きな数字になりそうなとき、我々が脅威を感じるということでしょう。

数字の感覚とのズレが少しずつ影を落とす

前述したように、私たちがお金の増減を割合で実感します。その一方で、割合が積み重なると指数関数となり実感できなくなる。合っていた感覚がズレていくのです。この特性が、お金のことを理解できるようでなかなか理解できない理由の一つだと私は考えます。

また企業の売り上げ、感染者数、学校の偏差値、株価・・・私たちはテクノロジーの進化によって毎日数字にさらされるようになりました。それをみると、ちょっと気が滅入る感じがするのは、このような「指数における数字の感覚と実際のズレ」が影響を及ぼしているように思います。心を健全に保つのには、数字から離れる瞬間を意識して作ることも大切かもしれません・・・と、パソコンの前でこの記事を書きながら、ネットニュースを読み、今日も数字にさられている私です。

2026年3月30日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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