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ストーリーを紡ぐ 〜 がんばれ国産家電

パナソニック製のスティック型コードレス掃除機を買いました。使っていた掃除機が壊れたのです。これまでは、最新テクノロジーで有名な海外メーカー製のコードレス掃除機を使用していました。

買ってみてびっくり。めちゃめちゃ使いやすい! 強力な吸引力、軽さ、ゴミの捨てやすさ、取り回しの良さ。どれをとってもパーフェクト。掃除がとても楽しくなりました。これまで使っていた海外製の製品は、吸引力がイマイチ(それが売り文句なのに・・・)でしたが「コードレスだからこんなものかな」ってあきらめていました。しかしパナソニック製は価格は安くて使いやすい。最初からこちらにしておけば良かったと思うことしきりです。

前回はどうして海外製の掃除機を買ってしまったか? マーケティングが秀逸だったのです。最新テクノロジーをうたい「これしかない感」を絶妙にあおってきます。国内メーカーに比べて価格が高かったことも、逆に性能や品質の良さの裏返しと思って買ってしまいました。思えば、欧州メーカーに比べて日本メーカーはアピールが下手です。例えば私が子供の頃には、日本にはオーディオメーカーがたくさんあり、日本の家庭のリビングには日本製オーディオセットが鎮座していました。しかしデジタル化やコンパクト化の波に乗れず、それらメーカーは消えていってしまいました。一方で欧州のオーディオメーカーは、生き残っています。買収が繰り返され、オーナーが変わっているかもしれませんが、少なくともブランドは残っている。日本のオーディオメーカーの多くは専業ではなく総合電機メーカーの一部門であったことや、日本の狭い家という事情もあったと思います。しかしそれ以上に感じるのは、欧州のオーディオブランドには

 「買いたくなるストーリーがある」

のです。

私も、高級スピーカーではないですが、欧州製のBluetoothのコンパクトスピーカーをついうっかり衝動買いしたこともあります(知人も同じものをうっかり買っていました)。価格は日本製の数倍です。お店で製品を眺めていると「これを買わないと・・・」と思わせるストーリーがあり、製品の価値を後押ししたのです。日本の家電メーカーに必要なのはストーリーなんだと思います。

それではどんなストーリーを紡ぐのが良いのか?考えてみました。

創業者神話

誰でも知っている創業者の理念というものがあります。ボーズ博士の「音作りへの飽くなき研究」だとか、ココ・シャネルが「女性を解放した」とか、ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダースが「誰にも真似をできないスパイスを作った」とか、そういう類のものです。これを創業者神話と言います。創業者神話という言葉は私のオリジナルではなくてHarvard Business Reviewの記事で知りました。なかなか上手いこと言いますよね。創業者の想いが目に見え、伝えられることで、私などはコロリとやられてしまいます。

パナソニック創業者である松下幸之助の「水道哲学」に込められた「人間の幸福は、物心両面の豊かさによって維持され向上が続けられる。精神的な安定と、物資の供給が相まって、初めて人生の幸福が安定する(パナソニックホームページより)」という言葉を、冒頭のコードレス掃除機は体現していると感じます。せっかくカリスマの日本が誇る創業者がいるのだから、パナソニックの家電部門に「松下電器」ブランドを復活させても良いのではないか? そんなふうにも思います。

地域に根ざした生活スタイル

スウェーデンという国は人口1000万の国でありながら、世界的なメーカーをいくつも輩出しています。そして製品が、皆おしゃれ。私はスウェーデンのボルボ車のユーザですが、乗っていると「そこはかとなくスウェーデンという国が好きになる」仕組みが、そこかしこにあります。落ち着いていていい感じの内装だったり、さりげなくシートについた小さな国旗だったり。またエレクトロラックスという家電メーカーの電子レンジは私の憧れです。日本の電子レンジがボタン多すぎで訳わかんないのに対して、ワット数と加熱時間の2ダイヤルだけ。それがまた洗練されていて格好いい。10年くらいまえに電子レンジを買い換えた時に、相当悩んだあげく買わなかったことをいまも後悔しています(値段が日本製の2倍くらいしたのです・・・)。IKEAもスウェーデンですね。みな北欧の暮らしをイメージさせる何かがあります。

デザイン会社の経営者の方に伺った話では、北欧のシンプルで機能的なデザインはスカンジナビアンデザイン(北欧デザイン)として、言語化され定義されているそうです。同じことができそうでできないのが日本です。日本という国の漠然としたイメージはあるものの、日本を代表するデザインを言語化しようとすると、あまりに多様すぎてしまいます。製品に竹や漆を使う、というのも安易。なかなか難しいのです。でも横浜とか仙台とか名古屋とか、そんな地域の色ならできるかもしれません。

話がそれますが、スウェーデンといえば私には忘れられないことがあります。10年以上前のことです。スウェーデンから出張に来た同僚の愚痴をオフィスで聞いていました。

 「丹羽さん。信じられないのよ。今年は仕事でほとんど夏休みが取れない。こんなこと初めてよ」
 「そうなんだ。それは可哀想。少しは休めるの?」
 「全然だめ。2週間しか休めない。1ヶ月未満の夏休みなんて、夏休みって言わないわよね」
 「・・・・」

彼女はグローバル企業の上級管理職です。やっているのはスウェーデン国内だけのビジネスではありません。夏が短い北欧とはいえ、こういったワークスタイルでも十分な国際競争力を維持できるなら、ひーこら働いてなんとかなっている我々ってなんなんだ? って思ったのを覚えています。

職人神話

ストーリーの最後は職人神話です。「エルメスは革職人が一針、一針、丹精込めて・・」みたいなもの。本当にそんな職人がすべての製品作りをしているはずはなく、工業化されているはずですが、なんとなく職人をイメージしてしまう。労働者の勤勉さと優秀さは日本でもイメージがあり、職人を想起させます。しかし日本の場合は価格に転化できず、「高品質で低価格」という印象になっていますね。もっと製品の価値に自信をもって、いまより価格を上げても良いって、いつも思います。

私は子供の頃から家電が大好きなんです。そしてそれらは皆、日本製品でした。日本の家電は素晴らしいです。事業を残すために値段をもっとあげても良い。手入れしやすい冷蔵庫、細かいところまで行き届く掃除機、めっちゃ美味しい炊飯器。テレビやビデオなど黒物家電がなくなりつつあるいま、生活家電は日本に残って欲しい。それは世界に誇れる文化でもあると思うのです。

2026年10月6日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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