脳を空っぽにして、一次情報を取りにいく

外出時にスマホをリュックにしまうようにして1ヶ月が経ちました。それまでの私はスマホ人間。片時もスマホを離さず、スマホを握りしめて生きてまいりました。転機は若者がふと漏らした一言。

 「AI時代の人間の役割って、一次情報を取ることかもしれませんね」

「ああ、それだ」。私は腹にストンと落ちる感じがありました。AIの情報を広く深く探索する能力には勝てない。さらにはまとめる力も勝てない。しかしフィールドワークの記事でも書いたようにAIの情報は高次情報です。どんなに深く探索してもAIの領域は、インターネットに掲載されているような電子情報だけなのです。世の中をダイレクトに捉える一次情報は人間のもの。そう考えたのです。とはいえフィジカルAIが進展すると、AIは目や耳を持つので変わるかもしれません。一年後には違うことを言っているかもしれないけれど、いまはまだ一次情報は人間のものだと思います。

そこで一次情報を増やす作戦として最初にしたのが「外出時にスマホをリュックにしまう」でした。

脳を空っぽにすると見える世界

一度怖い目に遭ってから、歩きスマホはやらなくなった私ですが、ちょっとしたスキにすぐにスマホの画面に目をやる癖があります。電車に乗っている時も車窓の眺めには目もくれず、なにやら検索し続けています。そんなスマホ中毒の私がリュックにスマホをしまって取り出しにくくすると、何がおきたのか?

まず周りをよく観察をするようになりました。一番変わったのは電車の中です。たとえば地下鉄の路線が交差しているところで「こっちの路線が上を走っているのだ」とか、電車の広告が以前と様変わりして「雑誌の広告はなくなって、鉄道会社によるマナーを訴える広告が増えた」とか、まあそんな類のことです。また電車を乗り換えで構内を歩いているときも、これまでは、スマホの情報が脳に残存しているせいか、先ほどまでスマホで読んでいた情報を考え続けて歩いていました。いまは割と脳が空っぽの状態なので「地下鉄の駅の構造ってこうなっているのだ」なんて発見して喜んでいます。

スマホを見ているとおびただしい情報が飛び込んでくるので、自分の脳のリソースが情報の処理に必死で、外界の景色を見ても反応しなかったようです。それを空っぽにすることで、一次情報を得ることができているような気がします。それがなんの役に立つのか?それはわかんないです。だけどイノベーションはゼロから生まれるのではなく、何かの組み合わせだったり、新しい解釈だったりするはずです。すると組み合わせを試したり、新たな解釈を考えたりする時間があった方がいい。

以前に感心した表現で「横浜駅は日本のサグラダ・ファミリア」というフレーズがありました。1872年に開業し、1928年に今の位置に引っ越した横浜駅。開業以来、ずっと工事を続けています。その構造はまさにラビリンス。横浜市民である私も「得意な通路」以外は、訳がわかりません。西口の工事完了によりついに終止符を打ったかのように見えましたが、まだまだ工事は続くようです。こんな状況も、意識せずに横浜駅構内を歩いていると「ああ、いつも工事をしているな」で終わるのですが、ちょっとひねってサグラダ・ファミリアと結びつけることで、いきなり情報がイキイキとしてきて、いつも工事をしている異常さに気がつきます。また「じゃあ、本家のサグラダ・ファミリアはなんで続いているんだろう?」とか「渋谷駅や、新宿駅だって負けていないぞ」とか、いろいろ考え始めます。まあ、それもだからなんだ、という話なんですが、何か新しいことがそこから見つかるかもしれない。そもそも私はそういう話が好きなので、やっぱり大事です。

会話も一次情報

もうひとつ、一次情報として捨ておけないのが、人との会話です。会話によって新しいアイデアが生まれることは、多くの方が体験していると思います。いまはリモートによって遠隔地の人や忙しい人とも、気軽に対話できるようになりました。人と話すことで気づきが多い私にはとてもありがたい状況です。

また対面での対話の重要性もリモート会議の発展によって実感しますよね。「ここぞ」というときには、やっぱり足を運んで話す方が良い。直接会うことで、対話の質は上がります。だけど時間は限られているので、リモートと対面をうまくバランスさせるのが大事なのでしょうね。

対話で面白いのは相手の発言によって次々と新しい発想が出てくる時です。子供であれ、大人であれ、自分とは違う脳の使い方をしている人との会話は発見がいっぱい。自分もアイデアが浮かんできます。ただし会話はリアルタイムがすべて。AIを使うことはできません。もしかしたら、AIばかりに頼ると会話力が落ちるかもしれません。

私は書くことが趣味なので、このコラムもアイデア出しにも文章にも、AIを使わないようにしています。コラムにAIを使うのは、私にとっては楽しんでマンガを読む代わりに、内容をAIに要約させるようなもの。趣味とは「手段の目的化」。書くことを楽しみたいのです。そうすると、案外、こんなコラムを書くことも一次情報取得に役に立っているのかも、って思っています。

2026年7月13日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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