「今日は気分が乗らない」誰にでもそんな日はあると思います。ちょっと体調が悪かったり、プライベートで心配ごとがあったり、低気圧だったり。事情はさまざま。いつもご機嫌というわけにはいきません。
私は、職場のメンバーにそんな身体や精神の状態を悟られないようにしてきました。職場に余計な気遣いをさせたくないと思っていたからです。けれども当事者研究を実践において熊谷先生から興味深い話を伺いました。当事者研究は自己開示、とくに自分の弱さの開示を実践します。そして「いま自分が不機嫌な状態であることも、積極的に他者に表明した方が良い」という考え方をします。
不機嫌さを表明する
いつも陽気でご機嫌なAさん。話しかけると明るい反応が返ってきます。ところが今日、仕事の相談をしてみるとなんとなく様子が違う。そんなときに周りの人が思うのは・・・
「相談した内容がまずかったのだろうか?」
「何か良くないことが、我々のプロジェクトに起きたのでは?」
「ご家族に心配ごとがあるのかな?」
いろいろ心配になってきます。とくに自分が「何か粗相をしでかしたのでないか」と自分の身を振り返ることも多いと思います。しかし実際のところは、Aさんの身に起きているのは
「朝から歯が痛い」
こんな話だったりします。そうすると、みんなでソワソワ懸念していたことは杞憂だとわかります。当事者研究ではこの心配にかけるエネルギーを「推論コスト」と呼びます。
組織が強くなるために推論コストを軽減する
長く仕事をしていると、職場でおきる多くの問題は、対人関係の問題であることがわかります。ベストセラーになった「嫌われる勇気(岸見一郎、古賀史健 著」でも「すべての悩みは対人関係の悩みである」とアドラー心理学を用いて説いています。そして対人関係の問題の多くは、「他者が考えていることは、ほとんどわかっていない」ことに起因しているように思います。
実際には「歯が痛い」だけなのに、周囲の人々があれやこれやと考えてしまう。こういった労力のことを「推論コスト」と呼びます。きちんと説明した方が良いと思うので、当事者研究のリーダーシッププログラムからそのまま引用しますね。
他者が何を感じ、考えているのかは、直接は目に見えず、言動から推測するしかありません。この推測にかかる労力を「推論コスト」と呼ぶことにすると、本プログラムで目指す組織のイメージは、社内の人間関係における推論コストをなるべく0に近づけるべく自己理解・自己開示をデフォルトにし、その分余ったエネルギーを、社外のクライアント等との関わりや業務に関する推論に割り振ることで、パフォーマンスを向上させた状態の組織になります。(当事者研究プログラムの熊谷晋一郎教授の解説)
つまり、「あの人はどう考えているのか?」「どうしてこんな反応をするのだろう?」というように、組織のもつエネルギーを対同僚への人間関係に無駄に使うのではなく、「いまこんな状態だから余裕がない」と自己開示することで推論コストを下げて、対クライアントへの対応など組織のミッション遂行のために使おうということです。
自己開示しないことで余計な心配をかけまいとした行為は、逆にチームのエネルギーを奪っていくわけです。職場の人には関係のなさそうな自分の弱さを話すと「かまってちゃん」になってしまうのでは、と心配して、今日も空元気(からげんき)の方も、遠慮なく自分の状態を伝えて下さい。その方がみんなで目標に向かって頑張れますよね。
アストロライフの当事者研究プログラムでは、リーダーシップ研修を推進しています。興味のある方はお問い合わせフォームからご連絡ください!

2026年7月6日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦