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すごいアナウンス

すごいアナウンスを聞きました。JRの電車に乗っていた時のことです。閉まりかけたドアが一度開閉して電車が発車しました。いつもの「駆け込み乗車は危険ですからおやめください」というアナウンスがあった後、その日いつもと違うアナウンスが続いたのです。これがすごい。

「駆け込み乗車は危険ですからおやめください。電車のドアはエレベーターと違い、人や物がはさまっても自動では開きません」

なんと! そりゃ確かにそうだ。エレベーターのドアにあるセンサーはありません。電車のドアは最後部にいる車掌さんが目視で開閉しています。私がよく乗る東海道線のように15両編成ともなると、車掌さんは50枚以上のドアを数秒のうちに確認して、危険があったら開けているのです。さらにカーブに差し掛かっているホームでは目視もできずモニターなどにも頼ることになります。この事実には驚くやら反省するやら。私も駆け込み乗車をしたことはありました。でも、そんなに危険なこととは認識していませんでした。

先日、ステッキだけがドアに挟まった状態で到着した電車の写真がSNSで話題になっていました。想像するにこのステッキの持ち主は、これまで閉じかけのエレベーターのドアにステッキを挟むことで、安全装置を反応させてドアを開けてきたに違いありません。しかしエレベーターとは違い電車ではそんな機構はないので、ステッキだけ挟まったまま電車が行ってしまったのでしょう。

従来の「駆け込み乗車は危険です」や「列車の運行に影響を与えます」も印象は良いですしそんなに悪くはない。だけど今回のアナウンスにはかないません。この卓越したアナウンス。何に私が感動したか思いつくところを書いてみます。

アナウンスのここがすごい

私は長年、人に対して説明したり説得したりする仕事をしてきました。我ながら会心の説明ができたこともありますし、自分なりの説得のコツなども持っています。だけどこのアナウンスのレベルからはほど遠く、これほど腹落ちするというか、説得力のある説明になるには、まだまだ修行が足りません。すごいポイントをあげてみたいと思います。

(1) こちらの安全に気遣いしている

これまで駆け込み乗車の危険性に対してのアナウンスは何度も聞きましたが、これを聞いたときに「本当に危険だ」としっくりきました。なんとかこちらに危険性を伝えたい、という気持ちが久々と感じられます。また列車の運行スケジュールへの影響についても、それはもちろん駆け込み乗車をやめさせたい重要な理由です。しかし駆け込み乗車をする人は自分のスケジュールを最優先で駆け込んでいますし、いまひとつピンと来てなくて他の人に迷惑をかけている意識がそれほど無い。その点「我が身が危険」なことは、誰もが対応を最優先させる事項です。

(2) メカニズムをきちんと説明している

危険性を理解してもらうには、なぜ危険なのかをストレートに説明するのが一番です。電車のドアには安全機構が無いという事実をまず理解してもらうことで、安全機構がない電車のドアは車掌さんが自分の目で確認しなければならないことがわかります。とくに人が多いときに数秒で確認するのは難しいと想像がつきます。

(3) 身近な例をあげて一発で理解させている

そしてその危険なメカニズムを理解してもらうのに、エレベーターという身近な例えを用いて聞いている人にリアリティを感じさせています。エレベーターの安全装置を引き合いに出すことで、電車には安全装置がないと聞いた人が一発で理解できるわけです。

べくはこの3つのことを数秒のアナウンスに凝縮させたのです。もうこれは天才レベル。私は平日はほぼ毎日電車に乗っていますので、人生でおそらく1000回以上の駆け込み乗車アナウンスを聞いていますが、初めてしっくりきました。

ただこのアナウンスを聞いたのはちょっと前ですが、惜しむらくは、それ以降ぱったり聞くことがありません。この車掌さんの個人技だったようです。興奮して盛り上がっているのは私だけだったのでしょうか・・・もったいないことです。

説明をあきらめない

思えば、歩きスマホ、エスカレーターの一列空けなど、街には解決したい課題が山積み。なかなか事態が改善しませんが、説明をあきらめないでおこうという気になりました。こういうわかりやすく腹落ちできる説明を編み出したいものです。

2026年6月22日
アストロライフ合同会社 代表
丹羽雅彦

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